【2025.03.21開催 第45回ウェビナー】質疑とその回答 集

 第45回K&iウェブアカデミー・ウェビナー
『続・失敗事例から学ぶ地盤問題解決方法』(2025.3.21開催)に寄せられた質疑とその回答 集

【2025.03.21開催 第45回ウェビナー】質疑とその回答 集 K&iウェブアカデミー

※本質疑回答の中で個人や法人、団体が特定出来る内容のものは掲載を見送りましたので、予めご了承ください。

■質問1



崩壊現象の原因は水だけ、との結論ですが、地震時の崩壊についても、過剰間隙水圧のみが問題になると考えてよいのでしょうか。

《回答1》

「水だけ」はやや誇張しています。もちろん他にも要因となるものはありますが、影響度が一番大きいのは過剰間隙水圧と考えています。

それは、過剰間隙水圧を組み入れないと現象が安定計算で再現できないことと、被災地調査の結果、記録的豪雨では爆発的破壊がしばしば起きていること、滑動崩落盛土には漏れなく飽和地下水が有ることと、すべり面傾斜角が一般にかなり緩い(5~10゜のものが多い)にもかかわらず、法面などの傾斜角が急角度の部分ではなく、緩い傾斜角のすべり面で滑動していること、などからの類推です。

当然、今後の被災事例の洗い直し等によって、考え方が修正されることはあると思っています。修正しやすいように、「リクツ」にして説明したとお考え下さい。

 地震時の崩壊は、盛土などは「過剰間隙水圧のみ」と言ってもいいと思いますが、岩盤崩壊などは地震動の方が影響が大きいと思います。地盤に作用する外力は様々ですから、それぞれの条件下で最も影響力が大きいものに対して予防対策をするのが効果的です。

■質問2



価格等はメーカに直接問合せとなるか。

《回答2》

どの製品の価格なのかわかりませんが、私が直接販売しているもの(土層強度検査棒のみ)以外については、メーカーに直接お尋ねください。特に鋼材系は、けっこう価格が変動しますので、こちらでの逐次把握を放棄して、メーカーに任せています。

【事務局より補足 事前と当日にも配布しました「地盤リスク問題解決ツール_2アップ」に記載がございますのでご確認ください】


■質問3



今回の講習会にて得られた情報を基に、公共事業の設計に活かす方法を知りたかった。会計検査等に対する説得力としてはどの程度のものがあるのか確認したい。

《回答3》

この質問があると思っていました。私自身は公共事業と民間事業の設計を区別していませんが、技術基準書に縛られる公共事業でそのままの方法論を使って担当者あるいはその上司を納得させるには、技術者側にかなりの理解度が必要で、手法のみを真似て使うだけだと難しいと思います。

私がおすすめの使い方は、「ほんまはどやねん」という自分への納得を、講演で紹介した方法でチェックして、同様以上の対策効果が技術基準で導いた対策でも得られるか、という二重チェックをするのが良いと思っています。

私も実際、公共事業ではそうすることの方が多かったです。自分の理解度もさることながら、相手の理解度は相手次第というところがありますから。

 ただ、裁判などの紛争案件で、紹介した方法論で解析し意見書に書いて「公的な技術基準に書かれている方法でないので認められない」と言われたことは一度もありません。裁判所からも、相手方からもです。

また、イエロー・レッドゾーンの斜面対策などの民間事業でも同様です。筋が通っていて、技術者の説明によって相手が十分理解できれば、本来公共事業だから・・・ということはないはずです。ただ現実として、公共事業において技術基準書に書かれていない方法を用いると、むしろ手間が大幅に増えてしまうことはあり得ます。

 私の経験でいえば、1985年ごろ、確率解析が世に出てきたころ、当時のベテラン設計技術者が自ら安定計算ソフトを創り解析して報告書に取りまとめたことがあります。

私はまだ新米だったので、説明を横から聞いていました。その報告書を受け取った担当者は、「最新の技術を使って解析してくださったことに感謝します。ただ、これを自分の上司に説明できる自信がないので、お願いですから普通の方法でやり直してもらえないでしょうか」とおっしゃいました。

いまも、公共事業ではそんな感じではないでしょうか。特に会計検査によって「横並び圧力」が強くなっているので、その時以上に難しいかもしれません。

■質問4



今回の講義では、一度崩壊した場所は、しばらくは崩壊しないとのご説明でしたが、別のところでは、崩壊は同じ場所で繰り返すともいわれています。
この同じ場所で崩壊が発生する状況としては、以前に崩壊した際の雨量を超える降雨があった場合(前回は落ち切らずに斜面に残っていた土砂が落ちること)や以前に崩壊した場所の周辺の土層が崩壊することを示していると考えますが、そのような理解でよろしいでしょうか。

《回答4》

すごく良い質問だと思います。同じ場所が繰り返して変動している箇所は存在します。私が説明した事例の場所との違いは、移動土塊が残存しているかどうかの違いです。表層崩壊で表層土塊がすべて流失したところは、土中の水圧が地表とバイパスされていて長期にわたり再崩壊しない場所です。

一方、土塊の移動が中途半端で斜面上に残存している箇所は、再度水圧が作用する機会があるので同じ場所が再滑動します。
大きめの崩壊地や、地すべりなどが再滑動しやすい場所です。地盤からの過剰間隙水圧が直接地表に抜けている場合には再滑動しないけれど、過剰間隙水圧の出口が土塊で覆われている場合には再滑動するということです。

 ご質問の「落ちきれなかった端部」は、力学的に不安定な形状(例えばオーバーハング)になったりして、落ちる場合が当然ありますが、それは今回の話の再滑動には含めていません。割と早い時期に侵食作用で解消されてしまう現象だからです。


■質問5



当方斜面は専門外ですので、誤った認識であれば、申し訳ございません。

表層崩壊の防止として、間隙水圧の消散を目的に、斜面に排水パイプを設置して水抜きをするという工法が動画内で紹介されておりました。

市街部などの宅地における液状化防止対策のうち、間隙水圧の消散を目的とした工法としてグラベルドレーン工法や人工材料ドレーン工法が挙げられます。

施工性や施工費用、施工可否は無視した極論ですが、斜面にグラベルドレーンや人工材料ドレーンを設置した場合、同様に表層崩壊が発生しない、若しくは発生しづらくなるという認識でよろしいのでしょうか。

《回答5》

良い質問だと思います。原理的にはおっしゃる通りです。過剰間隙水圧が消散できれば斜面崩壊は防げます。グラベルドレーンと若干似ているのがフトン篭工です。地盤の奥にまでは入っていませんが、この礫の隙間で浅部の過剰間隙水圧消散ができるので、フトン篭工は対策効果が高い工法です。仮設工の位置づけで使われることが多く惜しいと思っています。

ただ、斜面と沖積地盤には違いがあります。自然斜面の中の水は、ソイルパイプという筒状の空洞(完全に空洞になっているとは限りませんが)を通って移動する水(パイプ流)が多いです。ソイルパイプの透水性はかなり高いです。

また、排水パイプを斜面に設置すると、その大きな排水パイプの空洞に自然のソイルパイプが時間の経過とともに自然に集まってきます。盛土は、地山と盛土底面付近との境界部に大きな物性値の違いがあるため、そこに水の流れができて大きなソイルパイプ(空洞と言ってもよい)を創ります。

これはソイルパイプに傾斜地地盤から地下水を排出する機能があるから起きることです。透水性の高い空洞状の部分から過剰間隙水圧を排除するにはパイプの距離が少し開いてても可能です。私の認識では、自然斜面なら2m格子、盛土の底面なら10mピッチくらいで過剰間隙水圧は消散できます(「認識」というより実績としてできています、という表現の方がいいと思います)。

一方、沖積砂地盤は、水の流れが極めてゆっくりで、ソイルパイプではなく粒子の隙間を流れます(間隙流とかマトリックス流とか呼びます)。
この間隙流に発生する過剰間隙水圧を消散するには、排水距離が近くないとできません。
有効パイプを沖積地盤の縦に打ち込む工法もありますが、私の記憶では最大でも0.5m格子くらいの広さまでしか広げられなかったはずです。ソイルパイプと地盤の間隙との透水性の違いです。

■質問6



詳しく勉強したいので、次の2件の引用文献の情報を教えてください。

・スライドP33:飯田智之(2012)、・スライドP39:内田ら(1996)

《回答6》

以下が文献の出典です。

①『斜面技術者に必要な斜面崩壊の知識』飯田智之著(2012)、鹿島出版のp.161

②パイプ流が斜面安定に与える影響 内田太郎ほか(1996)https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjshwr1988/9/4/9_4_330/_pdf


■質問7



恒久排水補強パイプは、礫が多い土質での適用はどうですか(施工性について)。

《回答7》

土の締まりが固すぎると打ち込みでは挿入できません。礫も打ち抜けない状態であれば打ち込み挿入できません。打ち込み途中で打ち込み不能となれば、そこで終えてパイプを切断します。

最初から固いのが分かっていて、それでも排水補強パイプを打つ場合にはφ65ミリ程度でプレ削孔してから打ち込み挿入します。地盤の固さ(N値)と打ち込み可能延長については一覧表を作って提示しています。礫地盤の場合は、試験施工をお勧めしています。

 30kgブレーカーで打ち込む場合、累積摩擦が概ね40kNまでなら割と容易に打ち込めます。50kNになるとかなり打ち込み困難になります。

N値5程度であれば、5mくらいまでは容易に打ち込めます。N値10くらいだと、2.5mくらいで打設困難になります。累積周面摩擦を小さくするために先端コーンの外径を若干大きくしてフリクションカットできるようにした新しいタイプの排水補強パイプ(NJ型)もありますので用途に応じて使い分けてください。


■質問8



①初生すべりの被害が雨量に反比例するということは、地盤強度が高いほうが被害が大きくなるという理解でよいですか。

②経験と勘では修正が困難な理由としては、論じている人に関わるということでしょうか?

《回答8》

すいません。①の質問の意味が解りません。

私の説明の仕方が悪く誤解されたように思います。
どこでこのように感じられたのかが分からないので、お答えができません。
具体的にどこのことかを再質問していただければ回答できると思います。

崩壊は土の安定問題で、被害は崩壊の結果生成された土砂が引き起こすものです。被害の大きさは保全対象によって変わります。雨量と崩壊の被害には、特別な関係はありません。一般論として雨量が多くなると全体としての被害が大きくなる傾向はあると思います。崩壊は自然現象で、被害は人間の生活圏との関係で様々です。

②「経験と勘」には筋書きが無いので修正が難しいということを説明しました。

「論じている人」の問題ではありません。例えは悪いかもしれませんが、電子回路の設計図があれば不具合を直すことはできますが、樹脂で固められて中が見えないパーツになっていると直しようがありません。考え方の筋書きがあれば、間違いが見つかったときに修正できます。筋書きが無くベテラン技術者の感覚だと、修正しようがありません。


■質問9



土層強度検査棒(Φ・C・γの計測)に興味がありました。使用実績(斜面設計の他、どの様な土木調査設計時に用いられてきたか)を知りたいと思いました。

《回答9》

使い方は各社・各技術者それぞれです。セミナーで紹介したのは、私の使い方です。その他の使い方は、土層強度検査棒研究会のHPのトップページにリンクされている、⼟層強度検査棒を⽤いた調査・評価の⼿引き(案)【 事 例 編 】などに詳しく書かれていますのでご覧ください。

  ◯土層強度研究会ホームページ
  https://dokenbo.org/

そしてご購入を地盤リスク研究所からしていただくと、ユーザーサポートページにノウハウをご紹介しています。

  ◯地盤リスク研究所 土層強度検査棒(SSP:Soil Strength Probe)
  https://risk-lab.net/ssp.html


■質問10



土層強度検査棒は確かに有能な器具ではあるが、表層の土質は木の根や空洞・その他の要因により、強度が千差万別になると思う。
私も急傾斜地で簡易貫入試験を行い、Cやφを計算したことがあるが、全然常識的な数値にならなかった。それをどうすれば都合の良い数値になるのかがわからない。

《回答10》

おっしゃるように木の根がある範囲内での計測はお勧めしません。
通常、木の根は地表下50cmくらいで疎になりますので、私は50cmの園芸用ハンドオーガーで50cm(φ35mm程度)を掘ってから、その穴を利用して計測します。

この方法を使うと、ロッドの周面摩擦をデータ整理の際に控除する必要が無くなるので試験が楽になります。
ただし、深部で計測する必要がある場合には、その方法が使えません(ボーリング孔の孔底を使って計測したり、SWS試験の穴を利用して計測する場合もあります)。

 簡易貫入試験(簡易動的コーン貫入試験)は、打撃のみの動的試験なので、強度に換算する場合、砂質土系なら内部摩擦角φのみ(c=0)、粘性土系なら粘着力cのみ(φ=0)になります。

これは、基礎地盤の支持力を調べる場合には有効ですが、斜面の安定問題にはあまり役に立ちません。斜面の安定問題には、cもφも両方必須です。両方の強度値が同時に現場で計測できる簡易な装置が無かったのですが、土層強度検査棒が初めてその壁を越えました。


■質問11



稚拙な質問で恐縮ですが、過剰間隙水圧が発生するイメージができません。

ソイルパイプを伝って普段地下水が流れている土層内で、なぜ過剰間隙水圧が発生するのでしょうか。それだけ大きな過剰間隙水圧が発生する前に、どこからか圧力が抜けるような気がするのですが、そのようにならないのはなぜでしょうか。
ある瞬間、圧力が抜けるスピードよりも、降雨強度が勝るからでしょうか。

《回答11》

本質に関わる良い質問です。
地震時でもないのに、なぜ土中に過剰間隙水圧が発生するのかの理解はとても重要です。
今回の講演では示しませんでしたが、都市の下水道で説明するとわかりやすいと思います。下水管(雨水管も含めて)をソイルパイプと思ってください。

大雨が降ると水路等から下水管にも水が供給され、地表は快適な状態が維持されます。
ところが、供給が多すぎて下水管が満タンになると、ずっと上流側の「水面」の高さの圧力が下流側にかかります。水深に比例した圧力です。水圧=比高×水の単位体積重量ですね。

都市では、所々に水圧消散ができる箇所があります。マンホールです。
時々ニュース映像でマンホールの蓋が噴き飛んだり、マンホールから水が噴き出したりしています。水圧損失を無視すれば、噴き出した水の高さの位置が、上流側の水面の高さです。

 昨年(2024)8月に東京で起きた集中豪雨の際のニュース映像をご覧になれば分かりやすいと思います。
https://newsdig.tbs.co.jp/articles/-/1372522?display=1

動画の2分40秒あたりにマンホールから水が噴き出している映像があります。
水柱の高さでこの位置での水圧がわかります。また8分30秒あたりに道路の厚いアスファルトが全体として持ち上がっている映像があります。この水圧がアスファルトの下に回りアスファルトをせり上げています。

 土の中でも同じことが起きています。
ソイルパイプは、強風化部や土砂層の下端など物性が大きく変わる付近に発達しやすいです。表面付近は土壌化してソイルパイプは安定的に維持されません。このため、地下のソイルパイプが飽和して、一種の被圧水が地下にできます。

こういう水圧のことを山地水文学では過剰間隙水圧と呼ぶそうです。その水圧を地表に解放するために上に載ってる土を吹き飛ばします。
これが表層崩壊の本質だと思っています。土が厚くて吹き飛ばせない場合には、剪断強度を低下させて破壊を引き起こし「スベリ」の形態になります。

 地表に雨が降って地下浸透し、ソイルパイプに到達してそこから水の横移動が始まります。移動時はそれなりに時間がかかりますが、谷部には上流部のいろんな方向から来たソイルパイプの水が似た時刻に到達し、短時間でソイルパイプが飽和してしまうため急激に土の中の水圧が上昇します。
ソイルパイプが地表に近い場所にあれば穴をあけて水圧を逃がすことができますが、やや深い位置にあるとそれができず土中に高い過剰間隙水圧が発生することになります。


■質問12



地盤状況は地球上で千差万別でそのための調査、結果判断であるが、なぜ一般値と比較してどうだ、高い低い、設定する定数は一般値で、という議論が生じるのか。

なぜ統一した見解上で議論しなければならないのか非常に疑問。
日本全国で通用する一般値を当てはめる必要性はあるのか。
土研棒も革新的だが、なぜ採用に至らないのか。

《回答12》

「一般値」が本当に一般値なら、それは利用価値があります。
講演でもご紹介したように概略計算に一般値を使うのが有効な場合もあります。
しかし、本当に一般値というものが存在するかどうかは、自分で確かめて合点がいった後にしたほうがいいと思います。

 土層強度検査棒での強度計測や、ステンレス円筒での単位体積重量計測などは、極めて簡単にできます。
単位体積重量は、特に湿潤重量においてはすごく幅が広く一般値と呼べるものはありません。空隙率も大きく違うので、湿潤重量に1を加えて飽和重量にするなど、実は全く間違っています。
逆に、表層土砂の強度は不思議なほどあまり大きなぶれがありません。基盤岩が異なるのになぜ?と考えさせられます。

 そういう疑問を頭に置き続けていると、殆どの表層土砂は「風成層」だという研究者の文献や書籍に目が留まるようになります。
それなら強度がほとんど違わない理由としてかなり有力です。それを支持する状況証拠として、古墳の上の土があります。古墳は作った時には表面は石張です。葺石(ふきいし)が全面に張られていて表面に土はありません(復元された神戸の五色塚古墳のように)。

ところが、古墳は皆、土で覆われています。その土がどこから来たか?空から来た風成層ではないか、ということになります。ただし、ミミズの影響も多々あるのではという考古学者もいらっしゃるので、まだまだ楽しみはたくさん残っています。

 土検棒のような新しい技術を使わないのは、多分公共事業のことを言われているのだと思います。民間事業や民事裁判では調査費の制約条件が厳しいので、土検棒は普通に使います。公共事業であまり使われないのは、標準歩掛りが無いことが大きな理由だと思います。ただ、標準歩掛りが無いと使わないという発注者、受注者は、どうやって自然と対峙するつもりなんだろう、とは思います。

 普及しないのは歩掛が無いからだとおっしゃる建設コンサル会社もありましたので、土層強度検査棒研究会では、参考歩掛を創って公開しています。

  ◯土層強度検査棒研究会のホームページ
   https://dokenbo.org/

■質問13



講習会、大変参考になりました。ありがとうございました。
ハイランナーが△形状なのは理由がありますか。フラットではないのは、風の影響を考慮しての形状でしょうか。

《回答13》

フラットだと、葉っぱが積もってそこに居続けます。フィルタがあるので水路に枝や葉っぱは入りませんが水も入りません。
それだと水路の意味が無くなります。斜めにすると、水が入る場所が常に確保されました。

また、乾いたときに載ってる場所が斜めになっているので風に吹き飛ばされやすいことが実験により確認できました。試行錯誤し、実験によってこの形がいい、となったものです。

■質問14



地震によるマンホール浮上防止対策としてマンホール周辺からの間隙水圧消散は有効でしょうか。

《回答14》

すでにそういう製品があったように思います。例えば下記のような情報があります。https://www.jiwet.or.jp/quarterly/n012/pdf/n012-013.pdf

狭い埋め戻し部の液状化防止なので、過剰間隙水圧を消散しても、セメント等で固化しても液状化を防げます。


■質問15



貴重な講演、ありがとうございました。

・崩壊原因とされる、(1)過剰間隙水圧、(2)地盤強度の低下、私も(1)が正解だと考えております。(2)も全応力強度の視点では、過剰間隙水圧により低下したと考えますが、いかがでしょうか?

・液状化の簡便な円弧すべり安定計算法に⊿u法があります。この⊿u法と、表層崩壊(太田様推奨)の解析法は同じように思われますが、違う点があればご教授ください。

・⊿u法は、液状化低効率FLから過剰間隙水圧比を設定する簡便な手法ですが、表層崩壊解析法の過剰間隙水圧比を設定する知見はないでしょうか。

以上についてご意見いただきたく、よろしくお願いします。

《回答15》

最初のご質問「地盤強度の低下は全応力強度の視点では過剰間隙水圧により低下したと考えられる」ですが、私にはよくわかりません。

熱海市伊豆山の原因報告書では「吸水軟化現象で強度低下した」と説明されています。
これがご指摘の説明でいいのかどうか私にはよくわかりません。
地震時にも、繰り返し荷重により強度低下したと説明されることがありますが、そういう
ケースが無いとは言わないが・・・くらいしか私にはわかりません。

二番目の質問です。おっしゃるように、液状化で用いる⊿u法の安定計算とかなりそっくり
ですが、違う部分もあります。異なる点は、以下の2点です。

(1)⊿u法では過剰間隙水圧比=1となったときの最大水圧は「自重」です。
自重起源の過剰間隙水圧です。ところが、ソイルパイプに発生する過剰間隙水圧は、ソイルパイプが飽和することによって発生するので、かなり上流側の高い位置から圧力がかかります。
すなわち位置エネルギー起源の過剰間隙水圧です。過剰間隙水圧が自重を超えることもあります。
私は熱海市伊豆山の盛土に発生した過剰間隙水圧は自重を上回っていたとみています。

(2)液状化で想定している過剰間隙水圧は、液状化土層全部(言い方が難しい)に発生します。
一方、紹介した方法で想定しているのは、ソイルパイプ(特に物性境界部)に発生します。全体か局部かという違いがあります。

その違いを理解したうえで計算モデルを創って計算するのであれば、⊿u法と同じといってもいいかもしれません。ただ、想定している地盤モデルは結構違います。

三番目のご質問「表層崩壊解析法の過剰間隙水圧比を設定する知見」は、あります。
スライド35に示しています。斜面の過剰間隙水圧は、液状化のように室内実験ができないので、実際に崩壊した箇所の再現計算によって、過剰間隙水圧比を逆算します。

下記の研究発表資料にそれを書いていますが、実際の崩壊地の再現では、過剰間隙水圧比は0~0.3くらいの間になります。当然これは事例や取得データが増えてくれば修正されるものです。修正しやすくするために過剰間隙水圧比をまとめた表を掲載しています。

  ◯ソイルパイプの過剰間隙水圧を考慮した安定計算法
  https://ohta-geo.co.jp/cms/wp-content/uploads/paper-20170824-2.pdf

この逆計算では、圧力水頭ゼロの位置を決めるのが味噌になります。
尾根などはもちろんですが、斜面途中の崩壊跡もゼロ地点とします。

要するに崩壊地は斜面にとったら過剰間隙水圧消散工という斜面崩壊防止工となっていると考えます。崩壊跡が崩壊予防対策工になるのだから、崩壊跡が多い箇所を危険個所としていては実際の現象と合わなくなるのは当たり前だという話もスライド24で示しました。


■質問16



表層崩壊の安定性評価に過剰間隙水圧を組み込む、ということには非常に納得がいきました。ただし、実際に過剰間隙水圧を何ポイントかで測る必要があり、それがたいへんかと思われます。また、測る時期(タイミング)によっても値が変わってくると思われます。通常であれば、ソイルパイプを差して、豪雨のあとを含めて数回観測するのかと思われますが、そのあたりのご見解をお伺いできればありがたく思います。特に、災害復旧対策の場面では何回か観測することが難しいかと思われます。

《回答16》

記録的豪雨をトリガーとする崩壊時の過剰間隙水圧を計測できた事例は多分ありません。
どこにいつ崩壊が発生するのかを予見するのが難しいので(記録的豪雨がいつどこに来るのかは神のみぞ知ること)、事前に計測器を設置することが難しいです。

地震時の過剰間隙水圧については、1968年の十勝沖地震の際に東北本線で国鉄によって計測された過剰間隙水圧比0.2の上昇の実測や、東日本大震災後に仙台市太白区緑が丘4丁目の盛土で京大防災研(当時)の釜井先生が計測された事例などがあります。

 表層崩壊は地盤調査すらされることが少ないので、なかなか実測は難しいでしょう。

 実測が難しい場合には、安定計算式の中で水圧、それも過剰間隙水圧のみを未知数にして、実際に崩壊した箇所で再現計算を行うことにより炙り出せます。

一つの式で1つの未知数にすることが肝要です。
式の数より未知数が多い不静定式では答えは導き出せません。土層強度がいちばんの変数なので、土検棒とステンレス円筒でc・φ・γ実測して定数化します。崩壊地では安全率Fsも既知といえます(私はFs=0.99を使います)。

記録的豪雨時なので地下水位=静水圧は地表面に一致させます。地形や崩壊形状も既知です。ここまでやると、安定解析式一つの中に、迪数は過剰間隙水圧のみになります。こうすることによって過剰間隙水圧比の逆算が可能になります。


■質問17



「表層崩壊の原因は水だけ」との結論でしたが、ずり落ち程度の崩壊は、やはり軟弱な地質が原因でしょうか。また、それは土建棒で判断できるでしょうか?

回答17

「水だけ」は印象付けるための演出で、誇張が入っています。

 「ずり落ち程度の崩壊」がどういうものをイメージされているのかよくわかりませんが、軟弱な地盤は素因で、スレーキングのような強度劣化を除けばトリガーはやはり水圧だろうと思います。

地盤強度が極端に小さければ、長期間の間にその土塊は消滅しますので、「今の瞬間に、たまたま地盤強度が小さい土塊が斜面上に存在して、それがたまたま滑った」という場面に出くわす確率は小さいです。時間軸を思考の中に入れて「たまたま」を排除するとスッキリした理屈が見えてくることがあります。


■質問18



一般的な表層崩壊の抑止工対策において、計画安全率1.2の時の崩壊確率はどの程度になりますでしょうか?

 以下、表層崩壊箇所調査の経験からの私見を述べさせていただきますが、ご意見をいただければ幸いです。

 太田氏のご指摘のとおり、表層崩壊の主原因は土質強度でなく層厚と降雨強度(間隙水圧)と考えております。その理由として、

  1. 崩壊部の周辺を広範囲に調査した場合、崩壊部より強度が低い箇所も多数存在し、
    必ずしも低強度部が崩壊してはいないこと。

  2. 表層部の強度は明瞭な地域的特性がなく、ほぼ似たような強度を示すこと。

  3. 私の経験ではほぼC=10~20kN/m2、φ=10~20°に集中しています。

  4. 3.記録的な集中豪雨時に崩壊が多発しており、崩壊斜面にソイルパイプが確認される
    こと。
    加えて小さなソイルパイプはある高さに配列して発達することが多いこと。

などからです。

せん断抵抗角φが集中豪雨時の間隙水圧の影響で失われると仮定した場合に、土質定数のバラツキ(変動係数20%)考慮して表層の限界層厚、崩壊確率を概算したことがありますが、
その結果

 限界層厚は1.2~2.5m、安全率1.2の時の崩壊確率は約28%、崩壊確率5%に押さえる
 には安全率1.6程度

が必要であるとの結論だったと思います。

 また、個人的にはこの表層厚は崩壊から免れている年代と比例すると考えております。
つまり、ある地域の一様な斜面であれば、層厚が厚い箇所ほど現況安全率が低い(崩壊の危険度が高い)と考えており、特に限界層厚以上の層厚箇所は要注意と判断しております。
厳密にはソイルパイプの発達状況も考慮する必要があるとは思いますが・・・。

 いずれにせよ、崩壊後の安全率が上昇した斜面に対策工が施工され、また、その抑止対策として、崩壊箇所に「のり枠+ロックボルト」、その両側の未崩壊部に「のり枠」の対策工が施工されている状況には驚かされます。

《回答18》

頂戴したご意見は、ほとんど私の考えと同じなので、同じ思考経路をたどられたのだと思います。

お尋ねの計画安全率1.2の崩壊確率ですが、もちろん条件次第ですが、私のイメージでは順算法なら30%、逆算法なら5%程度だと思っています。

その確率に、記録的豪雨が発生する確率を乗じると、1年あたりの崩壊発生確率となります。100年に一度の記録的豪雨で崩壊する斜面なら、順算法で3%/年、逆算法で0.5%/年ということです。あくまでもイメージなので、数値の正確性はありません。

 ご意見の1についてもその通りですね。強度を実測すると、表層崩壊に土層強度はあまり関与していない(粘着力は関与するけれど似たり寄ったりだし)ように思えてきます。

 ご意見の2についても同じ考えです。
基盤岩が異なるのになぜ同じような強度となるのかが謎でしたが、土壌の専門家の書籍などを読むと、表層土砂層の多くが「風成層」だと言われています。

もしそれが正しいのであれば、表層土砂層の強度がある一定範囲内に収まるのは納得できます。強度が同じなら崩壊特性・形状も似たり寄ったりになるはずです。
「がけ崩れ災害の実態」と一定強度と仮定したときの計算結果がイイ線いくことをスライド41で示しました。

 ご意見の3もその通りですね。物性値の境界(地山であれば強風化部と弱風化部の境界、表層土砂層と地山との境界、盛土であれば地山との境界やよく締め固めた部分とそうでない部分の境界など)にソイルパイプが発達しています。

 試算結果も、私がやったものと同じような結果です。順計算時の安全率1.2の崩壊確率も同じような感じですね。

 「表層厚は崩壊から免れている年代と比例する」についてですが、私も賛同します。
ただまだまだ謎多き部分とも言えます。先に書いた「風成層」であれば、厚さが年代に比例するのは当然です。ただ土壌の専門家は、霜柱による土の移動やミミズによる土の移動の影響の話もされますので、まだまだ奥が深いと感じています。
斜面崩壊を予防するというエンジニアリングの目的を達成するのに、その深みまで突っ込む必要は無いのかもしれません。

 最後の「崩壊後の安全率が上昇した斜面に対策工が施工され」ですが、公共事業には「民生の安定」という側面もあるので、完全には否定しませんが、程度問題だと思っています。ちょっといまのやり方は過大が過ぎると思っています。


■質問19



講演大変楽しく聴講させていただきました。

質問:1

①法枠工が施工中に流れ落ちた
質問:主アンカーピン・補助アンカーピンは不動地盤まで入れないといけないのでしょうか?

 どの程度内容の表土であったか不明ですが、法枠工はあくまで抑制工としての工法なので、アンカーピンは施工中のすべり止めと考えていました。

 不動地盤まで入れるとなると2mになる場合もあると思いますが、不動土塊まで挿入する必要あるのでしょうか?

質問:2

排水補強パイプについて

素人な質問で恐縮です。

既設盛土の水位低下や過剰間隙水圧の低減を目的として計画する場合に、低減量をどう評価し計画したらよろしいのでしょうか?

以上、ご教授をお願いいたします。

《回答19》

1のご質問について。不動土塊まで挿入するべきだとは思いません。
非常にゆるい土砂部で止めてしまったがために、記録的豪雨時に崩壊を起こして、施工中の法枠が一緒に滑り落ちてしまった、というのは単なる事実です。

講演でも話しましたし、スライド5にも書いていますが、この記録的豪雨が無ければ、何事もなかったように完成した仕事だと思います。どこまで記録的豪雨に対処するかというリスク管理の問題だと思います。

私が今思っているのは、さすがにユルユルの場所ばかりだったら怖いので、少しは入りにくいところまで入れておいたら良かったのではないか、という思いです。
設計図面への注意事項として、アンカーピンを挿入した際に、地盤があまりにも緩い場合には、アンカーピンを少し長くして、やや締まった地盤まで挿入してください」という注意書きを書いておくのが良いのではないかと考えています。

 2の質問は実際に設計する立場の方としては当然のものだと思います。
実際に排水補強パイプを設置して、水位を観測した現場がいくつかあります。高速道路法面で施工されたものは、集中豪雨時に地表まで水位が上がってきたそうです。

その後すぐに低下したとのことです。この事実から、静水圧は記録的豪雨時には短期的に地表まで来るのだろうと考えています。表層土砂の間隙の体積もそれほど多くないので、間隙を浸透水が埋めてしまえば地表まで水位が上昇するからです。

 一方、私が実施したのは、木曽川水系の堤防での水位観測です。河川側からの浸透水は、出水時であっても排水パイプの先端の高さより上には上がりませんでした。

 これらのことから、常時の条件を考える場合、パイプの先端より地下水位が上昇しないものとして計算することが多いです。ただし、背面の集水域からの供給能力を考えて、ある程度のさじ加減が必要だと思います。

 過剰間隙水圧は計測できないので、崩壊地の実績から逆算した値を用います。
スライド35に示しています。表の下に、過剰間隙水圧比=0.15を平均値として、標準偏差σ=0.05とし、3σの幅で正規分布でばらつくという確率計算をします。
排水補強パイプを打設した位置で、過剰間隙水圧がゼロとなるようにします。圧力水頭ゼロ地点とするわけです。

そしてパイプの下から比高に応じて過剰間隙水圧が発生すると仮定して、目的の破壊確率になるようにピッチを変化させて計算しています。スライド42の右下の図が排水補強パイプを入れた場合の、静水圧(地表位置で変化なし)と過剰間隙水圧(のこぎり状)を示しています。

 この種の方法は、いつまでたっても暫定的な方法と考えざるを得ませんので、知見が増えるごとに少しずつ改善していくしかないと思っています。


■質問20



地すべり安定性の三次元解析(20ページのスライドなど)でどのようなソフトを使っているのでしょうか。教えてください。

《回答20》

カナダのRocscience社のSlide3というソフトです。
この会社は、岩盤力学で有名なEvert Hoek先生(割と最近にお亡くなりになりました)が関係した会社です。Toronto大学とも深いつながりがあるようです。1990年代に創立し、私はこの会社ができて間もないころからよくこの会社のソフトを使用しています。最近になって海外の解析ソフトについてJICAが調べたところ、この会社のソフトが世界中でよく使われているそうです。(ただし3次元解析には言及していません)

  ◯カナダのRocdcience社
  
https://www.rocscience.com/software/slide3

  ◯全世界 道路防災のための斜面対策事業の基礎研究 (プロジェクト研究)(QCBS) 
   無償資金協力事業における斜面対策の 参考資料およびFAQ(落石・斜面崩壊編)
  
https://openjicareport.jica.go.jp/pdf/12380598.pdf